雑談 手の外科治療について
手の外科で取り扱う疾患を分類すると、いろんな分け方があるのですが、今回は使いすぎや加齢による「変性疾患」と、怪我による「外傷性疾患」に分けて考えてみたいと思います。
手の外科で扱う変性疾患は、代表的なものでは「手根管症候群」、「ばね指」、「腱鞘炎」などなど多数存在します。おおむね時間をかけて症状が出現し、徐々に悪くなっていく疾患です。
お困りの患者様の数も多く、ほとんどの疾患において治療方針(ここまで進んだらこう治そうという方針)が定まっていますし、緊急手術になることはほぼありません。
十分なトレーニングを受けた手外科医のいる施設であれば、形成外科出身、整形外科出身で得意分野の差はあれど十分に対応していただけることと思います。
一方で、外傷性疾患の場合は多少状況が変わってきます。特に血行障害を伴う怪我の場合です。イラストのように完全に切断された組織は、早期に血流が再開されないと壊死に陥ってしまいます。
これが指先でなく、上腕など筋肉量の多い組織であればさらに急を要します。対応できる施設はぐっと絞られ、早急に救急車を依頼して搬送先を探してもらわなければなりません。
このような上肢外傷の治療を行うには、すぐに手術室で麻酔をかけてもらえて、骨、血管、筋肉、神経の修復に長けた手外科医がいて、また手術後の合併症を管理できる入院施設がなくてはなりません。当然、病棟での看護や事務手続きを行ってくれるスタッフも必要になります。
こうした体制の整った病院が近くにあるとは限らず、自宅からはなれた施設に搬送されることもありうると思います。
まずは組織が生着(生き残る)しなくては話になりませんが、こうした再接着手術(ちぎれた組織をつなぐ手術)を受けたあとも手術、リハビリを続ける必要がある場合がほとんどです。手はつながっていればよいというわけでなく、可能な限り機能的な状態に回復させる必要があるためです。
どのような追加手術、リハビリが必要かは、どこが損傷されたかだけでなく、仕事内容や利き腕かどうか、傷を負った見た目をどこまで受け入れられるかなどいろいろな要素を勘案して決定します。欲を言うのであれば、本当は初回の再接着手術の時にどこまで回復を見込めそうか計画が立ててあり、それに基づいて手術、リハビリを行っていくことが理想ですが、なかなかそう簡単にはいきません。
治療には時間がかかることが多いですし、治療方針決定過程で主治医の先生のお話が十分腑に落ちない時もあるかと思います。そんな時には、時間をとってセカンドオピニオン外来(第3者の先生の意見を聞きに行くこと)を受けることも可能です。
意見を聞きたい医療機関のホームページなどにセカンドオピニオンの受け方など記載があることが多いので、一度問い合わせたうえで受診、相談されるといいかと思います。しっかり理解、納得したうえで治療を受けることで、手術、リハビリの目的や取り組み方、ひいては結果に差が出ることになります。
なんだか外傷の話ばかりになってしまいましたが、手の外科で扱う疾患では機能回復のためにリハビリも含め治療期間が長くなることがあります。そのため、変性疾患と外傷疾患とも、良い治療結果を得るためには大まかな目標や治療の流れをご理解いただくことがとても重要になります。
この雑談が皆さんがご納得のいく治療を受けられる一助となれたなら幸いです。